滋賀県彦根市【議会広聴の取り組みについて】
1 彦根市の概要
彦根市は滋賀県北東部に位置し、総面積 196.87平方キロメートル、人口は約11万人である。江戸時代は彦根藩の城下町であったことから、歴史遺産が数多く存在する。また、生産用機械機器やゴム製品を中心とした工業都市の性格を持つとともに、滋賀大学・滋賀県立大学などが立地する学園都市でもある。
2 議会広聴の取り組みについて
彦根市では平成24年に議会に関する市民アンケートを実施したところ、主な意見として「市議会に関心がない」「市民との対話の場がない」「議員の活動内容がわからない」等が寄せられたため、広報広聴への取り組みのために、「議場開放促進委員会」「広報委員会」「広聴委員会」の3委員会を設置し、子ども議会や議会報告会、大学連携など様々な議会改革・解放の取り組みを行っている。
彦根市で行っている子ども議会は市内小学6年生を対象としており、開催の目的としては小学生が政治への関心を深め、社会参加への意欲を培うこととともに、保護者に市議会や行政の取り組みを身近に感じてもらうことである。実施体制は、市議会のほか、市(企画課)や教育委員会と連携して行っている。市議会は、議会開放促進委員会が、子ども議会に係る運営全般や事前研修・リハーサル・本番における進行補助を担当している。彦根市では、子ども議会を計16回も実施しており、兄弟姉妹で子ども議員を経験するケースもでていることから、子どもに加え保護者も議会や市政に関心を持つきっかけとなっている。また、子ども議会からの質問で、実現した政策はないが、子ども議会の質問がきっかけとなり執行部の政策を後押ししている状況は見受けられるという。ただ、少子化や学校でのイベントの多様化、児童の習い事の多様化から、子ども議会の参加人数の減少が現在の課題との事であった。
彦根市の議会報告会は、平成26年度から実施しており、平成26年度は対面方式、平成27年度と平成28年度は市民や高校生・大学生とのワークショップ方式、平成29年度から令和元年度はワールドカフェ方式、令和2年度はコロナ禍を受けてオンライン議会報告会、令和3年度・令和4年度は小規模対面方式と様々な方式で実施をしている。様々な方式で議会報告会をしている理由としては、議会報告会を実施した結果をもとに、どうしたら一般市民の声をきくことができるのか等、改めて報告会のあり方を検討しているからとの事であった。また、近年では「出張!議会広聴の日」として、彦根ゆかたまつりでシールアンケートを実施し、市民の要望を調査している。課題としては「参加者の少なさや偏り」「事前のニーズ把握不足」が挙げられるが、課題解決に向け、議会だよりを活用した二次元コード付きのアンケートも実施しており、今後も継続的に行っていくとの事であった。
また、彦根市では開かれた議会を目指し、市内の大学との連携も行っている。平成29年に、地方自治及び地域社会の活性化と地域における人材育成に寄与することを目的として、滋賀大学経済学部と連携及び協力に関する協定を締結している。提携による効果としては、学生の参画(議会報告会や授業での意見交換会、インターンなど)により、普段の議員活動では出会えない新たな視点の発見や、学生の地方自治・地方議会への興味の醸成が挙げられるという。ただ、現在は意見交換などといった取り組みにとどまっているため、今後は大学の専門性を議会活動に活かすための連携・協力を行いたいとの事であった。
今回の彦根市の視察では、本市でまだ行っていない議会と大学との連携事業をはじめ、議会広聴に向け様々な手法で試行錯誤している議会報告会や子ども議会等について、実際の様子や良い点、実施していくうえの課題等を彦根市の議員様より直接伺うことができ、本市の議会改革を進めるにあたり、大変参考になるものであった。
大阪府和泉市【議会運営・議会改革について】
1 和泉市の概要
和泉市は大阪府南部に位置し、総面積84.98平方キロメートル、人口は約18万1千人である。近年は、関西空港や大阪都心へのアクセスの良さから大阪都市圏のベットタウンとしても発展している。
2 議会運営・議会改革について
和泉市では平成18年に「議会改革検討会議」を設置し、議会改革に関する問題を調査項目に掲げ、他市議会の状況等を調査しながら議会改革を進めていた。協議すべき事項が少なくなったことを踏まえ、令和2年に「議会改革検討会議」は終了したが、市議会を取り巻く状況も変化し、改めて議会改革を推進するため検討の場が必要との意見があったことから、令和5年に「議会改革活性化会議」を設置した。和泉市では、100項目の議会改革に取り組むことを目指し、議会のインターネット配信やタブレット導入、UDトーク・ヒアリングループの導入など様々な議会改革に取り組んでいる。議会改革の内容については難しい内容に取り組むのではなく、取り組みやすい小さなことを実施しているとの事である。
和泉市では、開かれた議会に向け、(1)UDトーク及びヒアリングループ、(2)インターネット配信、(3)議案書及び会議資料等の公開、(4)ライブ中継時に一般質問通告の掲載に取り組んでいる。取り組みの一つであるUDトークは、音声認識で声を文字化するもので、聴覚に障がいのある方を支えるなど、様々な方のコミュニケーションをサポートできるものである。和泉市では、開かれた議会に向けて、聴覚障がい者等にも会議を円滑に傍聴してもらえるような環境を整備をしている。例えば、本会議では傍聴席にあるモニターに字幕を表示させ、聴覚障がい者等でも傍聴できる環境を作っている。また、本会議ライブ中継とは別にUDトークで音声認識した文字をライブでインターネット配信しており、聴覚障がい者等でもインターネット上でライブ中継を視聴できるような工夫をしている。UDトークは会議音声をモニターに表示させるだけでなく、テキストデータとして取り出せるため、発言訂正や発言取り消し等で会議中早急に音声を確認する必要が出た場合も、UDトークのテキストデータを利用することで、円滑な議事運営につながっているとの事であった。UDトークについて、和泉市議会では無償版を使用しているが、無償版は1つの自治体で1つのアカウントしか取得できないため、庁内全体で使用希望があった場合は予算化の検討も必要との事である。
また、和泉市では住民が傍聴を含め、議会活動に参加しやすい環境づくりに努めている。例えば、予約なしでの議場見学(夏休み中のみ)や社会科見学の受け入れ、子ども議会の開催、大学との事業連携なども行っている。和泉市の子ども議会は、小・中学生を対象にしており、教育委員会から与えられた大きいテーマをもとに、小・中学生が個別に提言内容を決め議場で提言を行う、模擬議会のような形式で実施している。議場での提言の後は、会場を移し市長・教育長・議員を交えて活発な意見交流を行っているとの事である。また、大学とも包括連携協定を締結し、令和5年度には懇談会の実施や、議会活動や学生の投票に関する意識を話し合っている。上記のように、和泉市議会では、市議会をより身近なものに感じてもらうために、学生・生徒・児童などと積極的に交流する場を設け、模擬議会や意見交換会など学校と共同した活動を行っている。
今回の視察では、UDトークで文字起こしする様子や使用している機械等を拝見することができ、貴重な体験をすることができた。また、予約不要の議場見学や市議会ホームページのリニューアルなど、取り組みやすい内容から少しずつ確実に議会改革を進めていく和泉市の姿勢は、今後小山市でも更なる議会改革を進めるにあたり、大変参考になるものであった。
静岡県菊川市【議会改革の取り組みについて】
1 菊川市の概要
菊川市は静岡県西部に位置し、総面積94.19平方キロメートル、人口は約4万7千人である。全国有数の茶産地でともに、電車で浜松市まで30分、静岡市まで40分の通勤・通学圏であり、近隣に御前崎港や静岡空港があることから自動車部品や工作機械を中心に企業・工場が立地している。
2 議会改革の取り組みについて
菊川市では、議会の公正性及び透明性を確保することにより、市民に開かれた議会、市民参加を推進する議会を目指し、議会の仕組みや議会運営など様々な改革に取り組んでいる。
議会への市民参加の推進としては、主に議会報告会・こども議会等を行っている。議会報告会は平成21年より実施しており、平成29年には、市民が親しみやすい報告会になるようネーミングを募集し、全議員の投票で「議会ふれあいミーティング語ら座ぁ」に決定した。ネーミング募集を行った理由としては、議会報告会の堅いイメージを払拭するためとの事であった。平成30年からは、通常平日夜に報告会を実施しているが、参加できない市民のため週休日に全体会を実施し、多くの市民の意見や参加を促している。併せて、全体会では託児環境や手話通訳を実施し、子育て中の方や障害を持つ方も気軽に参加できる体制を構築している。ただ、基本的に開催時間が夜であるため、昼間でないと参加できない方がいることや、議会報告会開催の周知方法について、検討する必要があるとの事であった。
こども議会は菊川市の未来を担うこどもたちを対象に、模擬議会の体験を通じて、議会や市政に関心を持ってもらい、将来の市議会議員及び有権者の教育を図ること、こどもたちの自由な意見・提言を聞き、今後の街づくりの参考とすることを目的とし、平成28年から開催し過去8回実施している。参加児童・生徒は市内在住の小学5年生から中学3年生で、答弁は、市長・副市長・教育長・執行部(部長級)で行っている。こども議会の運営は、市議会・教育委員会・執行部で行っており、市議会は、オリエンテーション、提言書のテーマ決め、調査・研究、提言書の作成、提言書発表当日までのこども議員のサポートを行っている。課題としては、参加者が集まりにくいことが挙げられており、周知方法・人数・応募資格等の検討を行っているとの事であった。
また、菊川市では、議会機能の強化として、政策討論会を実施している。菊川市の政策討論会は、二元代表制の一翼を担う市議会としての責任と意欲を高め、各議員が建前ではなく本音の想いを徹底して意見交換を行うことを目的としている。議会としての共通認識及びすべての議員が積極的に参加するための工夫として、設定する課題をいくつかの分野に分け、その分野ごとに分科会を設置し、調査研究を行っている。その後分科会での調査結果を発表し、それぞれ全体で討論を行った後、提言等として執行部に提出している。分科会を設置することで、議員個々にかかる役割や責任が明確になり、積極的に調査研究に取り組むほか、討論した結果が、提言等として執行部に提出されることも、積極的に討論に参加する要因になっている。
菊川市では議会改革の取り組みとして、その他にも菊川市議会図書室と菊川市立図書館及び静岡県立中央図書館との連携協力や議会業務継続計画(BCP)を策定する等、幅広い取り組みを行っている。今回の菊川市の視察では、本市で行っていない政策討論会はじめ、議会改革の推進や市民に開かれた議会を目指すための様々な取り組みを伺うことができ、大変有意義であった。今後小山市でも更なる議会改革を進めるにあたり、菊川市で拝見した様々な議会改革は大変参考になるものであった。