7月12日、全国オーガニック給食協議会の視察研修会が長野県松川町で現地とオンラインで開催されました。
第1部は、学校給食の喫食で会場参加で行われました。
第2部は、まず山田正彦元農林水産大臣から、全国でオーガニック給食が始まっていること、常陸大宮市開催される第2回全国オーガニック給食フォーラムについてお話しがありました。
続いて、松川町の北沢町長から、日本の農業が元気になる形で有機が進んでいくとよいとごあいさつがありました。
最後に、地元の宮下一郎衆議院議員から、お昼のオーガニック給食がおいしかったこと、議員連盟で6回勉強会を行い、提言という形で財政支援、地域循環、人材育成、食育、米粉パンの5点について農林水産大臣に中間報告したこと、
地元松川町について、農福連携のこと、農園の中でフルコース料理が食べられること、新しいことにバリバリ取り組んでいる町とお話しがありました。
各報告をご紹介します。
報告1 環境保全型農業を推進し、遊休農地を解消しよう
宮島公香、松川町産業観光課農業振興係長
宮島さんは、バックに中央アルプスが見えるほ場の写真をタイトルにして、松川町で有機給食が始まった経緯について話しました。
令和元年は、遊休農地対策として身土不二の考えの下、1人1坪農園を推進していたところ、
令和2年には環境保全型農業を推進しようと12月に「松川町ゆうきの里を育てよう連絡協議会」を発足。有機栽培研修会として、ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、お米、ネギの主要5品目の研修会を実施しました。
食材が足りなくても、栄養士さんに柔軟に対応もらったり、虫や、機械に入らない等のトラブルも都度話し合いをして解決しているとのこと。
令和3年は、毎月実施している栄養士、生産者及び直売所との打ち合わせ会に調理員も参加、調理員の希望でほ場見学を実施。
令和5年から給食無償化を実施、有機食材の価格について、一般よりも安い時もあるとのこと。
また、松川町のオーガニックビレッジ宣言にふれ、交付金を活用した土壌分析により菌の数が見えることを示しました。
そして、松川町ゆうき給食とどけ隊の活動として、給食への葉物野菜、松川町産小麦のパンの提供を紹介しました。
最後に、今後も話し合いを続けて、地域のみなさんの思いを形にしたいと締めくくりました。
報告2 有機給食の導入から食育へ
木下めぐ美、松川中央小学校栄養士、町栄養教諭
木下さんは、松川中央小学校の概要を、児童生徒数531名、教職員51名、栄養士1名、調理員6名と紹介し、
地域の野菜を給食へ出荷する量がない、できない現状がある。
有機の野菜をどうやって食育につなげていくか。
地域の食材を使わないで指導するのはさびしい。
有機の使用割合を増やしていると話しました。
そして、有機食材導入実現に向けた取組として
1 有機野菜・有機米の栽培量の計画
2 有機野菜・有機米の購入価格の算出
3 有機食材規格の確認
4 搬入方法の確認
5 給食への使用確認打ち合わせのお願い
をあげました。
有機食材の導入から、調理員には「食育」を担っているというプロ意識が芽生え、生産者とそのほ場を知る大切さを学び、自分たちで主体的な研修を実践したとのこと。
有機食材導入から食育実践につながる「給食」を進めていくと話しました。
報告3 持続可能性には大事だけど、無農薬、無肥料は無理じゃない? そんな疑念を持つ方へ
吉田太郎、松川町アドバイザー、NPO法人日本有機農業研究会理事、「土と健康」編集長
吉田さんは、まず「いいのはわかるけど、本当にできるんですか。」と投げかけ、
・菌ちゃん先生が群馬県農林部関係職員に向けて行った講演会
・漢方薬が効くか効かないかには、腸内細菌が関わっているという話
・今治市の有機農業の事例から、薬をまくと天敵が住めない話
・肥料を多くやると、硝酸態窒素が発生し、稲の夜露が苦い話
・「健康な作物」は、人間にはおいしいけど、害虫には「おいしくない」
等の事例を紹介しました。
また、稲葉光國先生の稲葉農法にふれ、どんどん深水にすると、ヒエが浮いてくると話しました。
そして、
・化学肥料をやっているところはちゃんとした微生物が住んでいないため、化学肥料をやらないと育たない話
・微生物と共生できない種の話
・JA東とくしまが2030年までに有機面積30%達成を目標としている話
・ゲノム解析により、種の中の微生物の働きが見えてきたとして、根っこの周辺で微生物が育ち、トマトの場合は根から葉へ、葉から実へ微生物が移動する話
等の話から、ローカルフードと種とオーガニックはセットであり、松川は松川、飯田は飯田、各地域で風土がちがうと話しました。
最後に、JAやさとの取り組みにふれ、有機部会員の中で知識が蓄積している。
ひとりひとりの農家が選んでやっていくことが大切と話しました。
質疑応答
まず、吉田さんが、NHKスペシャルでそばが取り上げられたが、雑草を刈る場合、刈らない場合、刈らない方が育つ。適度に草をのこした方が育つと話しました。
会場の東京都の方からは、野菜、お米の購入価格、支払い方法について教えてほしいと質問があり、
学校の平均価格と直売所の価格を勘案し、双方納得のいく価格としている。直売所が15%の手数料をいただき農家に支払っていると答えました。
次に、神奈川県の方からは、松川町は農業委員を連れていすみ市を視察したとのことだが、慣行農家との関係はどうかと質問し、
松川町の農家は、果樹が80%で、野菜は農協に出荷しているため、学校給食への出荷はゼロからの取り組みだったと答えました。
また、学校給食の牛乳が紙コップだったことに質問があり、
原乳が松川町ととなり町のものであるため、紙コップで配膳しているとのことでした。
続けて、司会のいすみ市鮫田さんから、有機打ち合わせ会議での町産業観光課の関わり方について質問があり、
月一回の会議では、2か月後にジャガイモができるので献立で使ってくださいなど話をするのだが、学校と農家が直接話すのではなく、市の担当が入ることで円滑な打ち合わせができるとのことでした。
第3部では、松川町ゆうき給食とどけ隊の野菜とお米の農場を中継していただく予定でしたが、雨のため中継は中止となりました。
農家、流通関係者だけでなく、学校栄養士、調理員まで参加する松川町の有機給食の取組はとても参考になりました。小山市でも農政課、教育委員会が連携して、有機給食の取組を進めていきたいとおもいます。