自然栽培入門 ー無肥料で作物が育つしくみー
今回のオーガニック講座は、弘前大学名誉教授の杉山修一さんをお招きし、無肥料・無農薬で作物を栽培する自然栽培についてお話しいただきました。
杉山さんは、木村秋則さんのリンゴ園の隣に杉山自然栽培研究農園を設置しています。無肥料・無農薬の栽培にはこれが必要というのがあり、そのやり方を教えている。自然農法は耕さないと。
そして、次回のオーガニック講座の講師を予定している黒田順子さんの資料を示し、発達障害と農薬使用料に相関関係がある、農薬は神経発達を阻害すると話しました。
そこで、どうすればいいか。自衛するしかない。無農薬の食材を給食に提供することは意味がある。
しかし、無農薬の食材を手に入れるのが難しい。日本の有機農業は少ない。有機農家が挫折してしまう。
増えない原因について、たい肥は、化学肥料と肥料分は同じで、病害虫が増える。病害虫は窒素が好き。日本は温暖な気象条件で、有機農業は広がりにくいと話しました。
解決策は、肥料、たい肥の使用を抑えた病害虫管理。無肥料だと、いもち病は発生しない。なぜか、ヒエもほとんど発生しない。無肥料にすることが合理的。有機栽培と自然栽培の違いとして、有機栽培は外部からたい肥を与えるが、自然栽培は微生物がつくりだすものが地力となる。畑には、自分で肥料を作る能力がある。自然栽培技術の核心は微生物生態系のコントロールと話しました。
植物が使う肥料は、空気中からいくものと土壌からいくものの2つの流れがある。自然栽培を30年やっても、そんなにミネラルは減らない。リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムの土壌含有量は土壌pHの影響が大きく、pHが陽イオン保持力(CEC)を高める、土壌pHが低い方がCECが低い。pH6、適正な位置にと話しました。
窒素は、アミノ酸、タンパク質の原料で、宮城県の黒澤さんの水田は無肥料で高収量。アンモニアが土壌中にあると、窒素固定が起こらない。土壌微生物による窒素固定が収量に大きく関与していると話しました。
また、土壌の乾燥は、イネの生長量を3倍に、葉身窒素濃度を2倍に増加させ、水田で窒素固定を行うメタン分解菌と鉄還元菌を増加させると話し、土壌の自律的栄養塩(肥料分)供給システムは微生物の活性化を通じて生じると話しました。
ただし、土壌の窒素固定細菌が、3年無施肥でも増えず、6年無施肥で増加したグラフを示し、窒素固定細菌が増えるには時間がかかると話しました。
そして土壌に対する考え方について
「作物を栽培するには肥料として外部から栄養塩を補給すること(施肥)が不可欠」という従来の考え方から
「土壌は微生物を中心とする多様な生物が集まった複雑な生態系であり、外部に持ち出された栄養塩を自立敵に供給する能力を持つ」→「好ましい微生物を増やす方法を理解するために生物社会についての理解が必要」という新しい考え方が必要と締めくくりました。
外部から資材を投入することなく、継続して農業を行うことができれば、それは理想的な農業です。
それを可能にする土壌の窒素固定細菌を、効率よく増加する農法が確立するとよいとおもいました。
自然栽培入門 [PDF形式/5.78MB]
※資料は講師のご厚意により掲載しています。資料の著作権は講師に帰属します。