教育長挨拶
ご挨拶
小山市教育委員会教育長 濱 口 隆 晴
令和5年度の始まりに当たり、ご挨拶申し上げます。
新型コロナウィルス感染症への対応が始まってから、3年が過ぎました。市内の各学校では、「子ども達の学びを止めない」という考え方で、様々な工夫をしながら、教職員と子ども達が一丸となって、日々の教育活動に取り組んできました。その努力の甲斐あって、コロナ禍の厳しい状況にあっても、子ども達の落ち着いた生活と、確実な成長の様子を見ることができました。昨今、ようやく変化の兆しが見えてきたものの、今なお慎重な判断が必要な状況が続いています。保護者や地域の皆様には、これまで同様、学校教育に対しての、ご理解・ご協力をこの場をお借りしてお願い申し上げます。
また、社会全体に目を移してもコロナ禍で中止や縮小を余儀なくされていた市内の各種文化芸術活動も昨年度後半あたりから少しずつ再開されてきました。参加者の皆様から、この3年間、発表の場がなかった無念さやご自身のモチベーション維持の難しさ等、率直な声を聞くことができました。改めてコロナ禍が私達の生活全般に与えてきた影響の大きさを感じ、生涯学習の意義や役割の大きさを再認識いたしました。
令和5年5月から新型コロナ感染症が2類から5類に引き下げられ、インフルエンザと同様な扱いに変わります。これを機に、様々な事柄が従来行われてきた形に戻っていくことが予想されます。「新しい生活様式」といわれる生活が定着してきた中で、この後、何を残し、何を変えるかを改めてもう一度、考える必要があると思います。教育界では、いつの時代も「不易と流行」が大きなテーマでした。不易とは言うまでもなく「長い間変わることなく、存続すること」また流行とは「新しい様式が、もてはやされ、広まること」です。別な言い方をすると今の教育界の姿は、それぞれの時代に「何を残し、何を変えるか」を考え、実践を重ねてきた結果でもあるのです。
新年度のスタートという心機一転の好機でもあるので、もう一度「不易と流行」について考え、周囲を見直してみる機会にしたいと考えています。
今年度の様々な教育課題に係る小山市教育委員会としての基本姿勢をまとめてみます。
〈学校教育〉
(1)「生命尊重」「人権尊重」の教育がすべての土台であり、「安全の保証」「確かな学力の保証」「成長の保証」の3つが学校の役割と考える。さらに目指す具体的な学校や子どもの姿を「子どもの瞳が輝き、笑顔があふれ、元気なあいさつが響く」として、知・徳・体のバランスのとれた児童生徒の育成に努める。
(2)「分かる・できる・定着する」授業づくりを目指し、児童生徒主体の学びの場を保証する中で、思考力・判断力・表現力等を高めていく。また「集団で学ぶ良さ」を活かしながら、一人一人の可能性を引き出すよう努める。
(3) 道徳科の年間指導計画に基づき、計画的・発展的な指導を行い、道徳教育の充実を図ると共に道徳性の育成に努める。
(4) 生きる力の育成を目指し、教科等間のつながり・小中一貫教育・地域教育力の導入等、各学校で特色ある教育課程の編成に努め、児童生徒の「学び」や「育ち」の広がりや深まりを支援していく。
(5) 子ども達には情報活用能力を身に付け、新しい時代を担える大人に育ってほしいと考えている。そのため、より一層ICTやネットワークの適切な活用方法を身に付けるよう指導をすると共に、情報モラルやセキュリティーの意識高揚に努める。
(6) 自己指導能力を育む児童生徒指導を展開することで、一人一人が楽しさや喜びを感じる学校生活の実現に努め、好ましい集団の育成を目指す。また特別な教育的支援を要する児童生徒への対応にも教職員の協働体制で取り組む。
(7) 学校は「子どものため」「子ども第一」という発想や考え方で子ども達に向き合い、地域や保護者の期待には、「成長した子どもの姿」を見せることで応えていく。
〈生涯教育〉
(1) 生涯学習センターの直営化によって、市内各施設で実施されていたサークル活動等が連携・協働できる条件が整った。この直営化をきっかけに、より一層、生涯学習の充実発展に努めたい。
(2)第三次小山市生涯学習推進計画が令和4年3月に策定され、その2年目を迎える。その計画の中では、目指す市民の姿として具体的に「いきいきと学び 積極的につながり 主体的にまちづくりに参画する市民」と設定している。目標達成に向けて市全体で取り組みたい。
(3)市民交流センターや地域の公民館の活性化、中央図書館・市立博物館・車屋美術館等の文化的施設の利用促進を図り、市民にとって、「地縁」・「知縁」づくりの拠点としてより身近な施設と感じられるようにしていきたい。
〈幼児教育〉
(1)幼・保・小全体を通して、子ども達の立場に立った幼少期の教育のあり方を考えていきたい。保護者の視点に立った保育施策と同時に、子どもの視点からの支援策を考えていきたい。
〈学校の適正規模化〉
(1)学校は地域の文化の拠点であり、心の拠り所でもある。避難所としても重要な役割を果たしてきた。小規模校の少人数教育の意義についても認めると共に、適正規模化との兼ね合いを考えていきたい。検討経過や結果については地域や保護者等への説明責任を十分に果たしながら進めていきたい。
(2)乙女中学区小学校希望選択制度については、市教委と保護者・地域・学校とが十分に協議をして導入した制度である。今後の動向を見守りながら、さらに慎重に協議を進めていきたい。
〈小中一貫教育〉
(1)小中一貫教育の基本理念はすばらしいと考えている。
(2)絹地区、豊田地区ではすでに小中一貫校がスタートしている。今後、その成果と課題について十分に検証すると共に、必要な物的・人的な条件について現状を精査しながら、小中一貫教育のあり方について、検討を重ねていきたい。
〈コミュニティスクール〉
(1)令和5年度からは、市内すべての学校に学校運営協議会が設置され、コミュニティスクールの推進体制が完備されることとなる。
(2)学校と地域家庭が連携・協働して地域全体で子供たちの学びや成長を支え、そのことをきっかけに地域住民相互の連携を深め、地域社会の活性化を図る「学校を核とした地域づくり」の取組を推進する。
〈児童生徒指導〉
(1)児童生徒が自己決定や自己選択の機会を通して「自己有用感」を実感できるようにする。そのためには児童生徒が主体的に自分の生き方を考えられるよう「心を育てる」視点で指導援助をしていく。
(2)家庭や地域、関係機関とのより一層の連携・協力を図り、各中学校区で義務教育9年間を見通した指導方針・内容を共有し、協働体制での指導を展開していく。
〈特別支援教育〉
(1)障がいの有無にかかわらず、全ての児童生徒に対する「個に応じた指導を一層充実させること」という理念に基づき、温かい人間関係を育むと共に、分かりやすい環境を柱として、安心感を高める指導に取り組む。
(2)特別な支援を必要とする児童生徒については「個別の教育支援計画」を作成し、全校体制による支援を推進していく。またスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用も積極的に図る。
新年度を迎え、新しい体制で市教育委員会もスタートをいたしました。教育委員会に属する各課とも、それぞれ大きな課題に真摯に取り組んでおります。風通しの良い職場づくりを目指し、多角的な検討を続けながら、進んでいきたいと考えております。私達は常に「子どもにとってどうか」という視点を忘れずに議論を進めていく所存です。
令和5年度もどうぞよろしくお願いいたします。
令和5年4月吉日
〈参考:令和5年度小山市教育委員会関係の主な事業〉 |