兵庫県芦屋市【オンライン議会報告会について】
芦屋市は、兵庫県の南東部、大阪市と神戸市の中間に位置し、六甲山を背に瀬戸内海に面している。総面積は18.57平方キロメートル、人口は約9万5千人であり、気候温和な自然環境と便利な交通環境など、生活条件に恵まれた住宅都市である。
(1)オンライン議会報告会を開催した経緯
芦屋市議会では、例年11月に決算報告を兼ねて議会報告会を開催していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、令和2年度及び令和3年度は中止となった。令和3年11月から報告会の開催方法について検討を重ね、令和4年5月にオンラインによる議会報告会を開催した。
(2)オンライン議会報告会の概要
芦屋市議会では、「JR芦屋駅南地区再開発事業について」をテーマとし、ZOOMを活用して議会報告会を開催した。当日の参加者は議員20名、市民31名であった。ブレイクアウトルーム機能を使用し、5つのルームに議員及び市民を均等に割り当て、グループごとに自由に意見交換を行った。
なお、報告会の流れは、(1)開会、(2)趣旨と全体の流れなどの説明、(3)議長あいさつ、(4)JR芦屋駅南地区再開発事業の説明(事業の概要、審議の経過)、(5)意見交換方法の説明、(6)意見交換、の順で行った。
(3)オンライン議会報告会の課題
芦屋市議会では、市民の参加者が少なかったことや、意見交換の時間が足りなくなるグループがあった一方で、聞くだけの人が多く、意見交換が難しいグループもあったことなどが課題となっているという。
また、オンラインで開催する際の注意点として、本番と同じ環境で予行演習が必要であることや、ZOOMには参加者数の上限があるため、事前に参加人数を把握しておくと良いこと、また、参加者アンケートの回答率を上げるため、アンケートは初めから表示しておき、いつでも記入できるようにすると良いことなどをご教示いただいた。
(4)視察を終えて
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、議会報告会を対面ではなくYoutube等の動画配信により行う事例が増えている。そのような中、芦屋市議会では双方向のコミュニケーションが可能なZOOMを活用し、市民と意見交換を実施している点が特徴的であった。感染防止対策と議会活動の両立が課題となる中、芦屋市の取り組み事例は大変参考になるものであった。
京都府舞鶴市【オンライン会議の導入について、議会防災訓練について】
舞鶴市は、京都府の北部に位置し、北は日本海に面し、東は福井県に接している。総面積は342.13平方キロメートル、人口は約7万8千人であり、田辺藩の城下町・商港から発展した西地区、海軍の軍港から発展した東地区が特徴的な市街地を形成している。
1.オンライン会議の導入について
(1)オンライン会議を導入した経緯
舞鶴市議会では、新しい議会の姿を目指す取り組みの一環として、また、感染症対策に限らず災害時においても議会の機能を一定維持することが必要であるとの考えから、令和2年7月にオンライン会議の導入について検討を開始し、令和3年6月に初のオンライン会議を開催した。
(2)オンライン会議導入の概要
舞鶴市議会では委員会条例等の改正を行い、常任委員会や議会運営委員会、議員協議会、広報会議等についてオンライン開催を可能とした。オンラインによる委員会等の開催実績は28回であり、その他の打ち合わせについてもオンラインで多数開催している。オンライン開催の効果は、会議への参加機会の確保や、迅速な対応、調査の多様化、災害への備えが可能となることだという。
(3)オンライン会議の課題
舞鶴市議会では、議員全員がいつでも対応できるスキルを身につけているか、意見が出にくくなっていないかなどの課題があったが、会派内でのフォローや会派会議での定期活用、回数を重ねることによる慣れにより解決している。
(4)視察を終えて(オンライン会議の導入について)
舞鶴市議会では、感染症対策に限らず、新しい議会の姿を目指す取り組みの1つとして、また、災害への備えとして、普段の打ち合わせにおいても積極的にオンラインを活用している点が印象的であった。小山市においても、令和4年7月現在、議会改革推進協議会においてオンライン会議の導入について検討していることから、舞鶴市議会の取り組みは大変参考になる事例であった。
2.議会防災訓練について
(1)議会防災訓練の概要
舞鶴市議会では、平成29年10月から令和4年7月までの間に議会防災訓練を6回実施している。その内容は、本会議や委員会中の地震発生を想定した非難訓練や、オンラインによる議会本部会議の開催に加えて、Web上の議員用掲示板に、被災状況の写真や地図データを添付する情報伝達訓練などである。
(2)議会防災訓練の課題
舞鶴市議会では、情報伝達方法への慣れや、情報の精度向上、庁舎全体の避難行動との連携や、議員と職員の役割分担などが課題になっているという。
(3)視察を終えて(議会防災訓練について)
小山市議会では、大規模災害発生時に市議会としての機能を適正に果たすため、令和2年に災害対応計画を策定し、年に1回、安否報告等の訓練を実施している。舞鶴市議会では、オンライン会議やWeb上の掲示板を活用した、より実効的な訓練を実施している点が特徴的であった。平成27年の関東・東北豪雨や、令和元年東日本台風によって多数の被害が発生した小山市にとって、その先進的な取り組みは大変参考になる事例であった。
三重県四日市市【議会改革について】
四日市市は、三重県の北部に位置し、西は鈴鹿山系、東は伊勢湾に面している。総面積は206.50平方キロメートルで、人口は約31万人である。昭和30年代に日本初の石油化学コンビナートが形成され、以後公害問題を克服し、中京工業地帯の一角を担う工業都市および県内一の商業地として発展した。
(1)四日市市議会の議会改革の概要
四日市市議会では、平成9年から様々な議会改革に取り組んできた。
特に平成23年3月の議会基本条例制定以降は、議会基本条例による新たな取り組みのほか、市民との情報共有、市民参加の促進および議員間討議の活性化を基本方針の三本柱とする先進的な取り組みを行ってきた。
(2)議会基本条例による新たな取り組み
四日市市議会では、議会基本条例による新たな取り組みとして、平成23年5月から通年議会や反問権、文書質問を導入した。
四日市市の通年議会は、5月から翌年4月までの1年間を会期とし、定例月議会を6月、9月、11月、2月に開催するものである。通年議会を導入して良かった点は、議長権限で早くに本会議が開けることや、災害や新型コロナウイルス感染症への対応について緊急議会で審議できること、1年を通して常任委員会活動ができることだという。
(3)市民参加促進の取り組み
四日市市議会では、市民参加促進の取り組みとして、市議会モニター制度の導入や、議会報告会の開催、各定例月会議における議案に対する意見募集、高校生議会の開催を行ってきた。
四日市市の高校生議会は、平成30年度、令和元年度には対面で実施し、参加者はそれぞれ9校28名、10校26名であった。
令和2年度は9校32名が参加予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、書面協議により実施した。具体的には、参加高校生が事前勉強会において「環境保全・ごみ問題」、「複合災害対策」、「地域活性化」をテーマに議論を行った後、意見書を作成し、議長に提出する形で行った。提出された意見書は、常任委員会の事項で取り上げられたという。
(4)視察を終えて
小山市では令和4年7月現在、議会改革推進協議会において、通年会期の導入について検討を行っている。また、市内6校の高校生・高専生との意見交換会の開催に向け、準備を進めているところである。
四日市市市議会の通年議会の導入事例や、高校生議会の取り組み事例は、今後の小山市議会の方針を検討するにあたり大変参考になるものであった。