ハンセン病を正しく理解しましょう
ハンセン病については過去、その内容について正しい理解がなされず、ハンセン病の患者の方は、今日まで想像を絶する偏見と差別にあいました。
その原因は、主に社会にハンセン病に対する正しい知識が普及されていないことによるものと言えます。
患者・元患者の方々に対する偏見や差別をなくし、人権が尊重される社会を実現していくためには、一人ひとりがハンセン病を正しく理解することがとても大切です。
ハンセン病とは、どんな病気?
ハンセン病は、明治6年(1873年)にノルウェーの医師・ハンセン氏が発見した「らい菌」に感染することで起こる病気です。
「らい菌」は感染力が弱く、非常にうつりにくい病気です。発病には個人の免疫力や衛生状態、栄養事情などが関係しますが、たとえ感染しても発病することはまれです。現在の日本の衛生状態や医療状況、生活環境を考えると、たとえ「らい菌」に感染しても、ハンセン病になることはほとんどありません。
日本人新規患者数:2013年1人、2014年1人、2015年1人(国立感染症研究所感染症疫学センター ホームページより)
ハンセン病は治ります
昭和18年(1943年)、米国で「プロミン」という薬がハンセン病によく効くことが報告され、その後もさまざまな薬が開発されました。
現在は、WHO(世界保健機関)が推奨する主に3種類の飲み薬を組み合わせて服用する治療が行われています。
ハンセン病は早期に発見し、適切な治療を行えば、顔や手足に後遺症を残すことなく、治るようになっています。
「らい菌」の感染力は弱い
「らい菌」の感染力は弱く、たとえ感染しても発病することはまれなことです。
いつも患者の方と接している国立ハンセン病療養所で働く職員さんも、ハンセン病を発病した人は今までに一人も確認されていません。
このことからも、感染力や発病力の弱さは明らかであり、隔離する必要もありません。
なぜ偏見や差別が生まれたのでしょう?
19世紀後半、ハンセン病はコレラやペストなどと同じような恐ろしい伝染病であると考えられていました。ハンセン病と診断されると当時は、市町村や療養所の職員、医師らが警察官を伴ってたびたび患者のもとを訪れました。そのうち近所に知られるようになり、家族も偏見や差別の対象にされることがあったため、患者は自ら療養所へ行くより仕方ない状況に追い込まれていったのです。
このような状況のもとで、昭和6年(1931年)に「らい予防法」が成立し、療養所の増床が行われ、各地にも新しく療養所が建設されていきました。各県では「無らい県運動」という名のもとに患者を療養所に送り込む施策が行われ、保健所の職員が患者の自宅を徹底的に消毒し、人里離れた場所に作られた療養所に送られていくという光景が、人々の心の中にハンセン病は恐ろしいというイメージを植え付け、それが偏見や差別を助長していったのです。
ハンセン病問題、解決に向けた取り組み
平成8年(1996年)に「らい予防法」は廃止されました。
その後、平成10年(1998年)7月に熊本地裁に「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟が提起され、翌年には東京、岡山でも訴訟が提起されました。
平成13年(2001年)5月11日、熊本地裁で原告が勝訴、政府は控訴しませんでした。同年6月には衆参両院で「ハンセン病問題に関する決議」が採択され、新たに補償を行う法律もできました。
国は、患者・元患者の方々に謝罪をし、平成14年(2002年)4月には、療養所退所後の福祉増進を目的とした「国立ハンセン病療養所等退所者給付金事業」を開始しました。
さらに平成21年(2009年)4月には、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が施行され、患者・元患者の方々の福祉の増進、名誉の回復等のための対策を進めています。