大阪府摂津市「摂津市地球温暖化対策地域計画について」
摂津市は大阪平野の北部に位置し人口約8万7千人の都市である。淀川の豊かな自然に育まれ、古くから農耕が盛んで、大阪と京都を結ぶ水陸交通の要衝として重要な役割を担ってきた。現在も、大阪の都市部から約12キロメートルの距離にあり、大阪市やその衛星都市と幹線道路や鉄道で結ばれていることから、大阪都市圏の核になる都市として発展を続けている。
摂津市地球温暖化対策地域計画は、地球温暖化問題を解決するための脱炭素化のトレンド、SDGsやパリ協定といった世界の潮流、国や大阪府が策定している各種計画を受けて策定したものである。前計画である地球温暖化防止地域計画が令和2年度に終了したことに伴い策定を始めたもので、当初、令和3年策定予定であったものが、国の計画見直しを受けて1年延長して令和4年3月に策定された。
本計画は低炭素から脱炭素社会を目指すもので、
- 「省エネルギーの推進」
- 「再生可能エネルギー等の利用拡大」
- 「脱炭素化に向けたまちづくり」
- 「循環型社会の構築」
- 「気候変動への適応」
の5つの基本方針に基づいて、各種施策を展開していくものである。
基本方針のそれぞれがSDGsの複数項目に対応しており、基本方針(1)から(4)までについては温室効果ガスの排出量を削減し、温暖化を「緩和」するための方策、基本方針(5)については気候変動の影響に「適応」するための方策である。
こどもエコノートや、本計画の小学生版を作成することで、環境教育にも力を入れている点や、エネルギー日記を作成することで市民や事業者等への啓発を行っている点から、市全体を巻き込んだ施策展開をしていると感じた。
本計画は策定したばかりであるが、他部署が脱炭素を意識した事業展開をするようになったことや、大阪府や他市との繋がりができたことで最新事例等の情報を得やすくなり、というような効果が出ている。
今後は、これまでコロナの影響でできなかった、環境フェスティバル等でPRしていくと共に、本計画の目玉となる補助制度の創設を検討していきたいとのことであった。
脱炭素化に向けた摂津市の取り組みは、環境都市宣言を行い、小山市環境基本計画を基に各種施策を行っている小山市にとって大変参考になる事例であった。
愛知県大府市「介護予防及び認知症総合支援事業について」
大府市は愛知県西部に位置し、人口約9万2千人の都市である。自動車関連産業が盛んであり、JR東海道線で名古屋駅まで約15分という立地や、高速道路網の整備により高い利便性を誇っている。昭和45年の市制施行以来、「健康都市」をまちづくりの基本理念に掲げ、その実現に向けて各種事業に取り組んでいる。
大府市が行っている認知症予防の代表的な取り組みとして「コグニサイズ」がある。コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが開発したもので、運動と、計算やしりとりなどの認知課題を組み合わせた認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語である。また、認知症不安ゼロ作戦と称して、コグニノート(活動記録手帳)の配布や、当該ノート利用者のつどいの開催、認知機能低下のリスクがある方への訪問、及び運動器・栄養・口腔機能の向上により高齢者の生活の質の向上を目指した健康長寿塾等の各種施策を展開している。これらの取り組みにより、市民の自主性を高め、専門職、専門機関による連携を図り、対象者に応じた支援により隙間を作らない制度設計を行っている。
また、認知症支援については、大府市内で認知症の方が亡くなる鉄道事故が発生し、鉄道会社から遺族に損害買収請求がなされる裁判が行われたことを契機として、平成29年に全国ではじめて「大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」を制定した。本条例を基本として、認知症サポーターの養成をはじめとした「普及啓発」、認知症地域支援推進員の設置をはじめとした「容態に応じた医療・介護の提供、連携の推進」、認知症高齢者見守り・捜索支援サービス(GPS端末の貸与)をはじめとした「見守り・地域支援体制づくり」、大府市成年後見センター(令和4年度から市単独で中核機関を設置)をはじめとした「認知症の本人、家族の支援」等の数多くの施策を行っている。
本事業の中の取り組みの一つとして、令和4年度に認知症サポーター養成2万人チャレンジを達成したことは、認知症に対する大府市の取り組みが市民にまで浸透していることを表しているものであると感じた。
認知症に係る数多くの事業により、予防から支援まできめ細やかな対応ができている大府市の取り組みは、複数の認知症高齢者支援事業に取り組んでいる小山市にとっても、大変参考になる事例であった。