愛知県大府市「ウェルネスバレー構想について」
大府市は人口約9万人、愛知県西部、知多半島の北端に位置し、名古屋市南東部に隣接しており、市域面積は33.66平方キロメートル。自動車関連の企業を中心とした金属や機械等の製造や木の山芋(伊勢芋)・ぶどうの生産量が愛知県内1位であるなど、工業、農業ともに盛んな都市である。
大府市では、隣接の東浦町とともに、あいち健康の森とその周辺エリアを「ウェルネスバレー」と名付け、この地区が健康長寿の一大拠点に発展することを目指し、平成20年度にウェルネスバレー基本計画を策定した。あいち健康の森周辺には、全国に6機関設置されている国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)の一つで、高齢者の自立を阻害する3大要因である認知症、運動器疾患(ロコモティブシンドローム)、フレイル(虚弱)など加齢に伴う疾患に係る医療の研究、治療、医療従事者に対する研修などを通じて、高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献することを役割としている国立長寿医療研究センターなど、健康・医療・福祉に関する施設が多数立地する全国でも有数の健康長寿分野関連機関の集積地となっている。
また、国立長寿医療研究センターなどを構成メンバーとしたウェルネスバレー推進協議会を平成23年11月18日に設立し、「ここに生まれてよかった(ここで子どもを育てたい)、ここで暮らしてきて幸せだった(ここで暮らしたい)」と思える「幸齢社会」の実現に向けて、先駆的な取り組みを推進している。
主な取り組みとして、ウェルネスバレーの基本理念の一つである「特色を活かした新産業の創出・育成」のためのウェルネスバレーブランド認定制度の運用・推進事業を行っている。この事業は、ウェルネスバレー構想を広く発信することと、ウェルネスバレー関係機関が開発等に関与した商品・サービスの販売促進のため、ブランド認定制度を運用し、イベントでの展示や広報による特集記事掲載、チラシ作成等により、積極的に制度のPRを行っている。また、ウェルネスバレー地区土地利用に係る調査設計業務により、健康長寿関連産業等を誘致ターゲットの中心とし、企業立地ニーズの確認及び現状把握を行い、需要量に見合った開発手法を検討し、現状に見合ったゾーニング計画案と、それに係るインフラ整備費の概算等を取りまとめることで、当該地域の魅力を高め、ウェルネスバレーとして相応しい都市基盤整備を推進している。
小山市では平成25年の「高齢化対応度日本一」に続く、「健康長寿100歳都市」を目指すとともに、新小山市民病院を核とする医療・健康介護施設展開ゾーンの整備を粟宮新都心構想として粟宮新都心基本計画を策定していることから、大府市の病院施設等を中心とした健康長寿の一大拠点とするための都市基盤整備を始めとするウェルネスバレー構想の先進的な取り組みは、今後の小山市の福祉政策にとって大変参考になる事例であった。
愛知県津島市「在宅医療介護連携推進事業について」
津島市は人口約6万人、愛知県西部、名古屋市から西に約16kmに位置し、市域面積は25.09平方キロメートルで、山岳丘陵がなく平たん地であり、市域のほとんどが海抜0m以下の低地である。木曽川、長良川、揖斐川の木曽三川を渡って尾張と伊勢を結ぶ河川交通上の要地「津島湊」として、また、全国天王信仰の中心地である「津島神社」の門前町として発展してきたまちである。
津島市では、津島市民病院の存続の危機から、地域医療再生が津島市の最大の課題となり、急性期病院の適正利用が重要であり、かかりつけ医機能、病診連携の強化や地域住民への啓発、医療確保の取り組みの中で、国のモデル事業採択により、全国に先駆けて「在宅医療連携拠点事業」を2012年4月に開始した。さらに、愛知県独自の取り組みとして平成27~29年度までの3年間、愛知県が県医師会に委託した事業の一環として郡市医師会に在宅医療サポートセンターが、医療圏ごとに中核サポートセンターが設置され(在宅医療サポートセンター事業)、地域ごとに在宅医療連携体制の整備が進められた。
全国的に平成30年度から「在宅医療・介護連携推進事業」の実施が義務付けられたところだが、津島市が属している4市2町1村(津島市、愛西市、弥富市、あま市、大治町、蟹江町、飛島村)で構成する海部医療圏(二次医療圏)では、津島市・海部両医師会の働きかけにより、在宅医療サポートセンター事業の取り組みを引き継ぎつつ、海部医療圏在宅医療・介護連携支援センターを設置し「在宅医療・介護連携推進事業」を海部医療圏の7市町村共同で実施している。海部医療圏は、医療を提供する基幹病院やヘルパーなどの介護サービスを提供する事業所が、十分にある地域ばかりではなく、近隣の市町村の医療機関や介護保険サービスを利用している方が少なくない地域で、これを踏まえ、自宅で暮らしながらの診療やデイサービス、ヘルパーなどの介護サービスを安心して受けられるようにするには、7つの自治体で一緒に考え、限られた医療と介護の資源を効率的、効果的に活用できるよう取り組むことが必要であった。
また、海部医療圏は両医師会協力の下、津島市民病院、あま市民病院、厚生連海南病院などの連携が図られ、医療圏全体で在宅医療を進める土台ができていることなどが、7市町村での共同設置を実現する後押しとなった。
主な取り組みとして、支援センターでは、在宅医療と介護サービスの切れ目のない提供体制の構築、医療・介護関係者の研修といった医療や介護従事者との取り組みのほか、相談窓口の設置、講演会の実施などによる啓発を初めとする8事業及び在宅医療サポートセンター継続事業を、7市町村と協働しつつ広域的に実施している。
栃木県は、人口10万人当たりの訪問看護ステーションの施設数に関して全国ワースト1、従事者数ではワースト2となっており、そのなかでも小山市は、人口10万人当たりの在宅療養支援診療所と訪問介護ステーションの施設数が全国及び県平均を大きく下回っている状況であることから、津島市の在宅医療・介護連携推進事業の取り組みは非常に参考になる事例であった。
静岡県浜松市「病児・病後児保育について」
浜松市は人口約80万人、静岡県西部に位置する政令指定都市。東京と大阪の中間付近に位置し、北部は赤石山系、東部は全国でも有数の流域を持つ天竜川、南部は広大な砂丘からなる遠州灘、西部は浜名湖と四方を異なる環境に囲まれている。市域面積1,558.06平方キロメートルで、全国で2番目に広い市である。
浜松市では、病気又は病気回復期にある児童の一時預かりを行うことにより、保護者の子育てと就労の両立を支援するとともに、児童の健全な育成及び資質の向上を図ることを目的とする病児・病後児保育事業を行っている。実施施設は6カ所で、すべて民間の施設となっている。開設日時は月曜日から金曜日までの午前7時30分から午後6時まで、配置職員は、国の「病児保育事業実施要綱」に規定する基準と同じ数の職員を配置している。利用料は、児童1人あたり日額1,500円となっている。
また、浜松市では「浜松市子ども・若者支援プラン」(事業計画)に基づき、平成31年度までに7つの行政区を6つのエリアに分け、それぞれのエリアに1つ以上の施設数を確保する計画としており、不足している1エリアについて、浜松市内にある私立の認定こども園や保育所により構成された浜松民間保育園園長会等に対して、開設を促していくこととしている。
小山市でも、病児・病後児保育事業を行っているが、実施施設数は4施設で、各地区に施設を確保するまでには至っていない。小山市は「子育て支援日本一」を目指していることから、浜松市の取り組みは非常に参考になる事例であった。