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  • 【更新日】2021年11月16日
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民生常任委員会視察報告(令和元年11月13日から15日)

香川県高松市「高齢者見守りへのICT活用について」

高松市は、人口約428,000人、面積375.52平方キロメートルで、香川県の北部に位置し、北は瀬戸内海に面し南は徳島県に至り、年間を通し寒暖差の少ない気候であり、高松空港を有し、四国で2番目の人口となっている。また、古くから城下町として栄え、瀬戸大橋開通や新高松空港開港等を経て、平成11年に中核市に移行した。

高松市の将来人口は穏やかな減少傾向で推移していくが、高齢化率、第1号被保険者における「要介護(要支援)認定者数・高齢者人口に対する認定率」及び「認知症高齢者数・認知症有病率」については、いずれも増加していくことが見込まれ、高齢者のみの世帯や一人暮らし高齢者世帯も増加しており、高齢者を取り巻く環境は厳しいものとなっている。

そのような中、高松市では地域包括ケアシステムの構築を推進しており、その一環として、様々な高齢者見守り事業を実施している。しかし、警察から市への情報提供に基づき事前登録をしている捜査協力員及び関係機関に対して情報提供を行う「徘徊高齢者電子メール配信システム事業」では、家族が公開捜査を拒否したり、捜査協力員数が伸び悩んだりしており、「あんしん通報サービス事業」においては、転倒事故等の突発的な身体異常への対応が困難で、利用も屋内に限定される等、既存の事業だけでは見守りが不十分であり、さらに、地域のつながりの希薄化に伴う近所同士の日常的な見守り機能の低下や、介護施設による受け入れの限界等を背景に、ICT活用した新たな高齢者見守り事業の調査研究が進められている。

平成29年10月、産学民官が連携し、官民データの収集・分析により地域課題を解決してくため計57者からなる「スマートシティたかまつ推進協議会」が設立した。そのような中、当推進協議会を構成する、「高松市」、ICT機器の開発を担当する「株式会社ミトラ」及び「独立行政法人国立高等専門学校機構 香川高等専門学校」の3者で包括協定を結びICTを活用した高齢者見守りシステムの構築を推進している。

当事業は、ベルト状の端末を身体に装着し、呼吸や心拍、位置情報、加速度情報等を収集し、徘徊や転倒事故等の異常が発生した際に、関係機関やケアマネージャー及び民生委員等に情報を提供することにより、高齢者の見守り体制を充実させるものである。さらに当機器については、前述の情報を蓄積することにより、個人の生活実態に合わせアラートを発信する等、事故予防機能も持ち合わせている。当事業における実証実験では、サービス付き高齢者向け住宅等において転倒事故が発生した際、発見までの時間が大幅に短縮したり、徘徊を想定した模擬実証において保護までの時間が短縮されたりする等の効果がみられる。

一方、先進的な取り組みであるが故に、サービス提供費用が高額になるため、当機器を全国に広める活動等も併せて実施している。このように既存の見守りシステムと比較しても、より良い効果が期待できるが、多くの利用者を獲得し事業の成果をあげるためには利用料(住民負担)の設定が重要な検討課題とのことであった。

高齢者の徘徊や転倒事故が問題となっている昨今、実用的で効果的な高齢者見守り事業の調査研究は重要な課題であり、視察当日は最新機器を装着し実体験させていただく等、有意義な視察となった。

岡山県岡山市「在宅介護総合特区(AAAシティおかやま)について」

岡山市は、岡山県の南部に位置しており、南は瀬戸内海に面し北には山間地が連なっているため、年間を通し温暖な気候に恵まれている。古代から文化発祥の地として栄え、明治に入り岡山県の政治経済の中心として更に発展し、交通網の発達や他自治体との合併等により平成19年に人口が70万人を超え、平成21年には政令指定都市に移行した。

岡山市では、高齢化の進展により、平成12年から平成30年の17年間で介護給付費が192億円から561億円と約2.9倍になっており、介護給付費の増大に伴う将来負担の上昇は避けられない状況となっている。一方、政令市において、医師数が全国第3位、通所介護事業所数、小規模多機能型居宅介護事業所数及びグループホーム事業所数が全国第1位等、岡山市の医療・介護資源は全国トップクラスである。また、岡山市の意識調査によると、医療や介護が必要となったときや終末期には「自宅」で過ごしたいという、高い市民ニーズが見受けられた。

これらを背景に岡山市では、平成25年より、全国に例のない、在宅介護に特化した特区の構築を推進してきた。
「介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会の構築」をコンセプトに、平成25年2月から平成30年3月を第1期として

  1. デイサービス改善インセンティブ事業
  2. 最先端介護機器貸与モデル事業
  3. 介護予防ポイント事業
  4. 医療法人による配食事サービスの実施
  5. 訪問介護・介護事業者に対する駐車場許可簡素化等

に取り組んできた。
平成30年4月からは第2期として

  1. 高齢者の活躍推進事業
  2. 訪問介護インセンティブ事業
  3. 介護ロボット普及推進事業
  4. 認知症情報共有事業等

を推し進めている。

現行の介護保険制度では、要介護度が高いほど事業者に支払われる報酬が高い仕組みになっているが、岡山市の特区の中で実施している「デイサービス改善インセンティブ事業」においては、利用者の状況が改善し、一定の指標を達成した事業所に対して表彰及び報奨金を出す等のインセンティブを付与している。なお評価の際は、介護度ではなく、別の指標を用いて利用者の状態改善の状況(介護サービスの質)を評価している。事業所職員の意欲や介護技術をさらに高め、利用者においても状態改善に伴い徐々に日常生活が楽に送れるようになる等、事業者、利用者双方にとって大きなメリットがあるところが特徴であり、長期的には介護給付費の抑制が期待できる。「介護サービスの質」の評価方法については、様々な指標を用いて、最初に「構造(施設及び組織の充実度)・経過(サービス提供のプロセス)」を評価し、これらを達成した事業所に対して「成果(状態改善の状況)」を評価するという流れである。なお、当事業の効果としては、平成28年度の介護給付費について、当事業費200万円に対し、年間約7,000万円の財政効果をあげている。

当特区においては、他にも、高額で容易に購入できない介護ロボットを無償で事業所に貸し出し、介護ロボットの普及と介護職員のスキルアップを図る「介護ロボット普及推進事業」や、これまでのお世話中心のサービスから介護事業所が就労や社会参加を提供すること等により、高齢者の能力を活かしながら自立を支援する「高齢者の活躍推進事業」等、魅力ある事業を推進している。

社会保障費が右肩上がりで推移し、介護給付費の増大に伴う将来負担の上昇が避けられない今、全国に例のない、在宅介護に特化した「在宅介護総合特区」には、高齢者を取り巻く課題を解決する様々な解決策が存在していた。

香川県丸亀市「高齢者運転免許自主返納支援事業について」

丸亀市は古くから海上の要衝であり、丸亀城下を中心に発展をとげ、北は瀬戸内海に面し、南に讃岐山脈が連なり、豊かな歴史と自然を有する人口約11万人、面積111.78平方キロメートルの都市である。

丸亀市の平成30年における交通事故発生状況については、死者数が44人と67年ぶりに40人台となった前年度の死者数48人を下回ったが、人口10万人当たりの死者数では全国ワースト6位という状況である。平成30年の死者数44人中、65歳以上の高齢者は28人となり63.6%を占めている。一方16歳から24歳までの若者については、交通事故発生件数が多い状況ではあるが、死亡事故は1件となっている。このことは、加齢に伴う運動能力・判断能力の低下が原因となり重大事故を引き起こしていることを示すものである。

このような状況の中、コミュニティバス利用者への助成はすでに行っている丸亀市では、高齢者運転免許自主返納支援事業に関わる、さらなる調査研究を進めた。その結果、バスを利用しない住民の免許返納も促すため、高齢者が免許を返納した際、

  1. タクシー利用券の交付
  2. ICOCAカード(JR系)の支給
  3. IruCaカード(私電)

の支給の3種類からいずれか1点を選択できる制度を設立した。同時に、通常は有料となる「運転経歴証明書」交付手数料の助成制度も立ち上げた。なお「運転経歴証明書」につては、香川県及び丸亀市の実施している運転免許返納に伴う助成制度を利用するのに必要な証明書であり、公的な身分証明書ともなるものである。

返納状況については、75歳を過ぎると増えていく傾向にあり、支援の内訳については、ドア・トゥ・ドアということからか、「タクシー利用券の交付」を選択する申請者が全体の69.7%を占めている。当事業は今年度から開始されたものであるが、アンケート調査の結果では60%以上が満足していると回答しており、一定の成果をあげている。

丸亀市では、今後も高齢免許保有者の増加が見込まれ、財源的にも厳しい状況となることが予測されるため、福祉部門や警察等の関係機関と連携し、さらなる調査研究を進めていくことが必要とのことである。

高齢者が被害者だけでなく加害者となる事故が課題となっている現在、高齢者の免許返納後の交通手段として、地域の実情に応じた多様な選択肢を提供する当事例は大変参考になるものであった。

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