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  • 【更新日】2021年11月16日
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民生常任委員会視察報告(平成28年10月24日から26日)

愛知県春日井市「移動販売事業について」

春日井市は、人口約311,000人で、市域は濃尾平野と尾張丘陵に広がっており、市の東部にはニュータウン等の大規模団地が開発され、名古屋市のベットタウンとなっている。

春日井市は、現在も人口が増加中であるが、ニュータウン地区では人口減少に加え高齢化が加速しており、高齢化率が市平均24.5%の約2倍の地区もある。また、大規模小売店舗数の増加に伴い、一般の小売店舗数は、平成11年の2,310店舗から平成24年には1,297店舗まで約6割に減少し、日常の買い物に不便を感じている方も増加している。

このような中、春日井市では、自動車やバス等の交通手段を利用できないことや身体的な理由等により日常の買い物に不便を感じている方に対して買い物の機会を提供し、併せて市内特産品等の販売を促進する、ビジネス手法を用いた移動販売事業を平成27年4月より開始した。事業開始にあたっては、商圏調査、候補地区の社会福祉協議会等へのヒアリング、市内全域の65歳以上で構成された1,000世帯を対象にしたアンケートの実施等、入念な準備を実施したことについて説明があった。

対象地区は、ニュータウン等の大規模団地で付近に大型店等がない4つの地区が選定されており、週2回、移動販売を実施している。農村部や過疎地域ではなく大規模団地等で買い物に困っている方が集中している地区を対象とし、市の実態に即して効率的に実施されており、移動販売車には冷蔵庫等も積載され、商品数も約400点と充実している。

事業形態については、事業主体である観光コンベンション協会が、販売主体であるスーパーマーケット等の提携業者に車両を貸与し、市が車両購入費の補助・市場調査・買い物弱者の掘り起し等の支援をしている。特に、市場調査、買い物弱者の掘り起しが重要であるとの説明があった。
当事業は市の実態に即して実施され利用者からの評判も良く、買い物後は地域住民の交流の場にもなっておりコミュニティー形成の役割も担っていることから、今後ますます社会の高齢化が進展する中で、大変参考になる事例であった。

愛知県豊田市「とよたエコフルタウンについて」

豊田市は、愛知県北部に位置する中核都市であり、人口は約423,000人で名古屋市に次いで県下2位となっている。面積は県内最大で、トヨタ自動車が本社を置く企業城下町である。

豊田市では、平成21年1月に、世界の先例となる低炭素社会への転換を進め国際社会を先導していくという方針に基づき、温室効果ガス排出の大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆的な取り組みにチャレンジする都市である「環境モデル都市」に選定されたことを契機に、環境先進都市として様々な取り組みを展開している。

そうした豊田市の取り組みを‘見える化‘し、分かりやすく伝える情報発信拠点として誕生したのが「とよたエコフルタウン」である。ここでは、都市部から中山間地、山間地と広がる豊田市の地域特性をコンパクトに再現。19社の企業の出展とともに低炭素な暮らしや交通、産業など各分野の先端環境技術が体験できるほか、新たな産業振興の拠点としても活用されている。超小型電気自動車や、燃料電池自動車に必要なエネルギーステーションであある水素ステーション、太陽光発電・HEMS(家庭用エネルギー管理システム)・蓄電池等を備えたスマートハウス等、先端技術が紹介されており、豊田市の環境モデル都市としての取り組みが非常に分かりやすく紹介されていた。

温暖化現象等が地球規模で問題化し、環境問題への意識が高まる中、無理なく無駄なく低炭素な暮らしを目指す豊田市の事例から学ぶことは多かった。

三重県鈴鹿市「ロボットスーツ装着訓練事業、福祉ロボット推進事業について」

鈴鹿市は、人口約200,000人で、東に伊勢湾、西に鈴鹿山脈と自然環境に恵まれ、世界的にも有名なレーシングコースである鈴鹿サーキットを有している。
ロボットスーツ装着訓練事業は、平成24年度に市単独事業の「障がい者手当事業」を廃止し、その代替事業として平成25年9月に開始した事業で、対象者は、身体障がい者手帳の交付を受けている肢体不自由1級から3級に該当する市民で、希望者に対して訓練10回分の費用を全額補助するものである。

事業利用者は、身体機能を改善・補助・再生することができる世界初のサイボーグ型ロボットであるHAL(Hybrid Assistive Limb)を使用し、鈴鹿医療科学大学内のロボケアセンターで訓練を実施することになる。このロボットスーツの特徴は、体に電極を取り付け、脳からの命令でロボットスーツのモーターを作動させることにより、脳・神経系への運動学習を促すことであり、これにより、効果的なリハビリが可能となる。

利用者は、平成25年度が50名、平成26年度が29名、平成27年度が9名であった。事業利用者が減少している理由は、先ずは事業の対象者に一度利用してもらうことによりロボットスーツのリハビリ効果を体験してもらうことが目的のため、当事業の利用が対象者ひとりにつき1セット(計10回)と決められているからである。事業利用終了後も効果を実感し自費で訓練を継続する方もいるが、費用が1回10,000円と高額なことや、リハビリのため苦痛を伴うこともあることから、事業の補助終了後は訓練を止めてしまう方もおり、さらに、潜在している対象者は約1,000人程いることを考慮すると、何らかの形で制度設計を見直していく必要があるとのことであった。

このような社会資源を活用して、障がい者の自立支援、介護職従事者の負担軽減等職場環境の改善、市内の医療系大学生を対象とした新たなヘルスケアサービスの担い手の育成、HAL試行活用施設を増やし市民へのHAL認知度を高め福祉の先進的取組が継続的に展開されること等を目的とし、平成27年度からは福祉ロボット推進事業が開始された。

一般市民向けHAL体験講座や、新たなヘルスケアサービスの担い手として鈴鹿医療科学大学の学生を対象にHAL訓練を担える人材を育成するための講義等を実施することにより、市民への一定の浸透や理解は得られているとのことである。また、福祉ロボット導入施設を増やす取り組みとして、福祉ロボットを活用して患者の機能回復訓練に取り組む医療機関や、介護職員の職場環境改善を図る福祉施設に対し、福祉ロボットを一定期間無償貸与し訓練結果の評価と事例の蓄積を行っており、これにより、介護施設の福祉ロボット購入に繋がった事例もあるが、現在のところ医療機関での普及は低い水準にあり、今後も積極的に普及を推進していく必要があるとのことであった。

今後ますます進展する高齢化や医療技術の進歩により福祉ロボット等の需要が増加することを考えると、抱えている課題は多いようであったが、鈴鹿市の事例は大変参考になるものであった。

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