北海道江別市「子育て広場『ぽこ あ ぽこ』事業について」
江別市は、人口約12万人で、石狩平野中央に位置しており市中心部から札幌まではJRで約20分の通勤圏内となっている。市内には世界有数の平地原生林が残る道立自然公園野幌森林公園など豊かな自然環境を有する一方で、道立図書館、4大学、公共・民間の研究機関が集積する文教都市でもある。
今回視察した子育て広場は、平成25年12月に開設した公設公営の子育て支援拠点施設で、愛称の「ぽこ あ ぽこ」は音楽用語で「ゆっくり、ゆったり、少しずつ」という意味で、子どもたちが元気に遊びながらゆっくり過ごせる施設になってほしいという願いで考案された。
広場は、JR野幌駅から近い商業施設内に設置され、会員登録をすることで、原則年中無休・無料でゼロ歳から小学6年生までが利用できる施設となっており、開設以来市内外から多くの利用者が訪れている。また、施設の特徴としては、遊具の設置だけではなく、子育てに関する講演会・講習会・各種講座の開催、子育て支援コーディネーターによる相談に加え、子育て世代の就労支援を推進するため、ハローワーク等と連携した求人情報等の掲示、人材サービス会社へ委託したキャリアカウンセラーによる就労相談を行っていることが挙げられる。
さらに、商業施設内という立地を活用し、広場に有料の託児施設を併設することで、保護者が安心して買い物や美容院の利用ができるようにしたり、市内企業と連携した、企業のPRを兼ねた無料の講演会・講習会等を開催したりするなど、子育てを楽しむことができるような環境の整備を図っている。
委員からは、遊具の設置費用等の開設費用やテナント料等の年間経費に関する質疑、キャリアカウンセラーが行う就労相談会の相談内容等の質疑が行われた。『ぽこ あ ぽこ』は、豊富な情報提供や各種相談の充実により、子どもの遊び場としてだけでなく、親も含めた子育て全体に目を向けた施設として大変参考になる事例であった。
北海道滝川市「公益財団法人 そらぷちキッズキャンプ」
滝川市は、人口約4万人で、札幌市と旭川市のほぼ中間に位置し、石狩川と空知川の合流点の肥沃な大地が広がる農業・商業のまちとなっている。
今回視察した公益財団法人そらぷちキッズキャンプは、難病とたたかう子どもたちが病気や日々の治療を気にせず遊べるようにと市北東部の丸加高原に整備された医療ケア体制が整った自然体験施設で、宿泊棟・食堂・浴室棟・保健室等が設置され、すべて企業や個人等からの寄附により運営されており、全国から難病とたたかう子どもと家族を参加費・交通費無料でキャンプに招待している。
キャンプには、子どものみが参加するキッズキャンプ、家族単位で参加するファミリーキャンプ、医療ケア度の高い子どもと家族が医療者同行で行うレスパイトキャンプ等があり、事前説明会や家庭訪問など事前に入念な情報交換を行った上で受け入れ、普段なかなか外で遊ぶことができない子どもたちに北海道の大自然を活かした乗馬や森遊びなど、自然とふれあい、仲間と楽しみ、チャレンジするための様々なプログラムが提供されている。キャンプでは、事前研修を修了したボランティアスタッフのほか、専門の医師、看護師、栄養士等が常駐し、日常の医療ケアが継続できるよう万全のサポート体制をとっており、また、滝川市立病院と連携し、緊急時には即時の受け入れが可能となる体制を構築している。
説明者からは、「普段屋内での生活が多い子どもたちはもちろん、子どもたちから目を離すことができない家族にとっても心身ともにリフレッシュできる貴重な機会となっており、全国からの参加希望にできる限り応えたいという思いで運営している。病気を持っていても、外でこれだけ遊ぶことができることを知ることで、未来に希望を持つことができると思う。こういう施設があることがまだ広く知られていないので、小山市においてもたくさんの方に知ってもらい、支援の輪を広げていただきたい。」とのお話があった。
また、併せて視察した滝川市立病院においては、そらぷちキッズキャンプとの連携について、キャンプ参加者に同行した主治医等が滝川市立病院と無報酬・非常勤の条件で契約することでキャンプ参加者が搬送された場合でも同行医師が市立病院内で医療行為を行うことが可能となっていることについて説明を受けた。また、市立病院の職員がボランティア休暇等を利用することで、スタッフとしてキッズキャンプに参加しており、参加希望者に対しては各所属長が勤務調整を行うなど積極的な参加を支援しているとのことであった。
委員からは、キャンプの運営費用となる寄附金の確保に向けた取り組みやスタッフの確保・育成についてなど、種々質疑が行われた。日々闘病生活を送っているこどもや家族が全国には多く存在しており、小山市においても同じような境遇にある家族がいると思われるので、そらぷちキッズキャンプのように、こどもや家族が未来に向けた目標や希望をもてるような取り組みの重要性を改めて認識した。
北海道旭川市「旭川市動物愛護センター『あにまある』について」
旭川市は、北海道のほぼ中央部に位置する人口約34万人の都市で、大雪山、石狩川の雄大な自然や日本最北の動物園である旭山動物園など豊富な資源を生かした観光都市となっている。また、旭川空港に加え、石北本線・宗谷本線・富良野線のJR3路線の経由地となっており、道北の経済・観光・物流の拠点都市となっている。
今回視察した旭川市動物愛護センター『あにまある』は、平成24年9月に開設された施設で、それまで旭川市における犬猫の収容管理を行っていた嵐山犬抑留所が、築40年と老朽化し、狭隘な収容室1室しかなく立地も市街地から遠距離で山の中腹ということもあり、適正な収容管理や譲渡事業の推進が困難であったことから、平成12年の中核市移行を機に建設が検討された。元所在地については、JR旭川駅から1月2日kmに位置し、交通アクセスが良好で、また、市の中心部でありながら官公庁等が立地していることから住宅地からの距離が保たれているという各種条件を満たした好立地となっている。
『あにまある』では、「命の大切さを伝える施設」「動物にやさしい施設」「人と動物の正しい関わり方を学べる施設」を基本コンセプトとし、殺処分ゼロを目指して、従来の犬猫の収容施設としてだけでなく、動物愛護の普及啓発や動物愛護ボランティアの支援を行うために犬猫飼育体験室や多目的ホールを備えた施設となっている。収容した犬猫については、全頭エイズ検査・三種混合予防接種の実施や、怪我等の確認及び譲渡希望者が見つかりやすいようにするための爪切りやトリミングを行い、また、犬については1日3回以上のドッグランでの散歩を行うなどきめ細かいケアを行っている。また、譲渡希望者に対しては、飼育にあたっての住宅環境や家族の方の了解を得る等の事前調査を行い、お試しの飼育期間を設けるなど、終生飼育できるかどうかについて判断してもらったあとに譲渡をする方式を採っている。
委員からは、犬猫を譲渡した後のアフターケアを行っているかや譲渡後に飼育が困難ということで返還の申し出があった場合にどうするか、動物愛護ボランティアや愛護推進員の活動内容についてなど種々質疑が行われた。
近年、犬猫等のペットを家族同様に大切に扱い飼育している家庭が多くある一方で、飼育できずに捨てられてしまう動物も多くなっている。飼い主が動物を終生飼育するための心構えや知識を持ち責任ある飼育を行うことが肝要であるが、やむを得ない事情で保護が必要となる動物も存在する。これまでのような処分を前提とした収容施設だけではなく、『あにまある』のように保護から次の飼い主への橋渡しを行う役目を果たしていくことも、動物・人間双方の幸せのために必要な施策であると感じた。