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  • 【更新日】2024年1月15日
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民生常任委員会視察報告(令和6年10月28日から30日)

長野県長野市「福祉避難所へ直接避難できる仕組みについて」

1 長野市の概要

長野市は長野県の北部に位置し、総面積834.85平方キロメートル、人口は約36万3000人である。妙高戸隠連山の山並みが連なり、長野盆地の中央を千曲川が流れる。善光寺の門前町として栄え、現在は第三次産業の比重が高い。りんごの生産は全国屈指である。

2 福祉避難所へ直接避難できる仕組みについて

(1) 事業を開始した経緯

長野市では、令和元年東日本台風災害の際に、重度の障がい者等で一般の避難所へ行けない方の中には、避難しない、避難できない方もいたことを受け、重度の障がい者等が直接避難できる避難先等について検討を開始した。そして、従来の福祉避難所(二次的避難所)に加え、重度の障がい者等が直接避難できる「指定福祉避難所」を確保するため、令和6年度から令和8年度にかけて「福祉避難所整備事業」を実施することとした。この事業は、指定福祉避難所の指定・公示や、避難対象者の特定、避難対象者の障害等に応じた物品等の備蓄、避難訓練、開設・運営訓練等を行うもので、直接避難を想定する障がい者等は、避難所においても生命維持のための対応が必要な方や、精神障がい者、知的障がい者等、一般の避難所へ行くことが困難な方とした。

(2) 令和5年度および令和6年度の取り組み

令和5年度には医療的ケア児の保護者と意見交換を行い、医療的ケア児とその家族が医療機器の電源を確保できる避難先を2カ所確保することとした。2施設に指定福祉避難所に指定すること等の説明を行い、同意を得て、令和6年度に指定を行った。なお、避難対象者は、在宅で人工呼吸器を装着している18歳未満の方等で、個別避難計画により市が事前に特定した者とした。その後、指定施設へ避難対象者の個別避難計画を共有するとともに、指定施設で備蓄品の準備や訓練を行った。なお、この訓練を通して、避難所における避難者と給電用電気自動車の動線や、ベッドから転落する危険性、想定以上に電源が必要となること、食事がそれぞれ異なり備蓄が難しいこと等の課題が明らかになったことから、各避難対象者の状況のさらなる把握や、施設ごとの避難所開設・運営マニュアルの作成を考えていると言う。

(3) 福祉避難所への直接避難に関する現状の評価

避難対象者からは、災害時に電源を確保できる避難先の選択肢が増えたとして、概ね良好な評価を受けている。一方で、避難する際の荷物が多く、準備と運搬に人手が必要なこと等への不安の声もあると言う。また、避難情報を正確に理解することが難しい避難対象者には個別に連絡する方法が考えられるが、市側の体制づくりと連絡ツールの選定が難しいことが課題となっている。なお、現在は18歳以上の方や行動障害がある方等の直接避難についても、当事者の意見を聴きながら検討を進めていると言う。

また、長野市では指定福祉避難所の確保と並行して、令和4年度から令和7年度にかけて「個別避難計画」の作成も進めている。こちらは優先度の高い方からケアマネジャー等の福祉専門職へ委託し、平常時のケアプラン作成に合わせて実施していると言う。

避難に困難を抱えている当事者・家族の意見や、訓練を通して明らかになった課題等を踏まえ、より実効性のある仕組みの構築を進めている長野市の事例は、大変参考になるものであった。

岐阜県美濃加茂市「美濃加茂市多文化共生推進プランと就学前児童に対するプレスクール事業について」

1 美濃加茂市の概要

美濃加茂市は岐阜県の中央南部、木曽川と飛騨川の合流点に位置し、総面積は74.81平方キロメートル、人口は約5万8000人である。江戸時代には中山道の宿場町として栄えた。近年は工業団地が整備され、製造業が基幹産業となっている。

2 美濃加茂市多文化共生推進プランについて

第3次美濃加茂市多文化共生推進プランは2019年度から2024年度までの6年間を実施期間とし、基本理念として「みんなで一緒につくる共生のまちづくり」を掲げている。これは、過去10年間で見えてきた美濃加茂市の課題(多国籍化に伴う多言語化の対応や、若い外国人のキャリア教育及び企業等の協力の必要性、日本人市民と外国人市民の共生の意識の醸成、外国人市民のニーズや施策の効果等の実態把握の必要性)を踏まえたものだと言う。

プランでは15項目の施策の方向を定めており、特に「教育体制の充実」のための施策に着目すると、就学前に日本語教室や生活指導を行う「プレスクール」や、小中学生に必要な日本語指導および生活指導を行う「のぞみ教室(初期適応指導教室)」、一定の教科の指導を行う「国際教室」、放課後に日本語学習や家庭学習の支援を行う「外国人児童生徒学習支援」を実施している。さらに、高校進学に向けて日本語指導、教科指導、進路相談等を行う「高校進学支援(かがやき教室)」や、高校生に大学進学・就職等の進路に可能性や夢を持てるようなキャリア教育を行う「ドリームフェア」を実施している。

3 未就学児童に対するプレスクール事業について

美濃加茂市では2016年に、保育園に在籍する外国籍児童等に日本語や小学校での生活の仕方等を教える「プレスクール事業」を開始した。その背景には、日本語が理解できない外国籍児童が増え続け、のぞみ教室に入りきらない状況があったと言う。現在、プレスクールは4園で年長児を対象に行っており、カリキュラムは年15回で、1時間ずつ保育時間内に実施している。これまでのプレスクールの結果、児童が小学校入学時にのぞみ教室ではなく通常学級でスタートできた、友達とのトラブルや個別の支援が少なくなった、全員日本語の理解が向上したという成果が見られたと言う。なお、令和6年度から認可外保育施設にも事業への協力を依頼し、可児市国際交流協会にプレスクール事業の業務委託を行っている。

プレスクールには、児童に小学校のルールやコミュニケーションの取り方、身の回りの生活習慣が身につく、学習する言語としての日本語を使えるようになる、日本で生活し、学び、就労するという将来的な見通しが持てるようになるといった効果がある。さらに保護者に対しても、就学への不安の軽減や、学習や教育に対する意識の高まり、日本の習慣や文化への理解等の効果があると言う。一方で、小学校就学に向けての課題としては、日本語の理解には個人差があり、コミュニケーションが上手く取れない児童等もいることや、学校生活に理解を得られにくい保護者もいること、また、のぞみ教室への入級が望ましい児童であっても、保護者の送迎が難しく、通常学級に入る場合もあること等が挙げられると言う。

4 視察を終えて

上述した取り組みにより、美濃加茂市の中学生外国籍生徒の高校進学率は、平成13年には22.2%であったところ、令和5年度には82.4%まで向上したと言う。なお、今後の課題としては、プレスクールを年中児から実施したいが、講師の確保が難しいこと、および未就園の児童に対する支援が挙げられると言う。

外国籍の児童等に対し、就学前から大学進学・就職等まで、切れ目のない教育体制を設けている美濃加茂市の事例は、大変参考になるものであった。

愛知県豊田市「身寄りを頼ることができない方への支援について」

1 豊田市の概要

豊田市は愛知県のほぼ中央に位置し、総面積は918.32平方キロメートル、人口は約41万5000人である。平野部では自動車産業の集積による内陸型工業地帯が形成され、山間部は自然が豊富で、観光資源に恵まれている。

2 身寄りを頼ることができない方への支援について

豊田市は企業城下町であるため、身寄りを頼ることができない人が多いという特徴がある。そのような環境下で、身寄りのない方の火葬・葬儀件数の急増や、身元保証人がないと入院・入所できないことがあるなど、サービス提供の問題が表面化したことを受け、令和2年から身寄りのない方への支援の仕組みについて検討を開始した。まず、国のガイドライン等について理解を深めるとともに、医療・介護の現場における身寄りのない方への支援について、課題意識の醸成を図ることを目的とした勉強会を開催した。令和3年には、豊田市成年後見・法福連携推進協議会の部会として、弁護士や医療・福祉の専門職等の多職種で構成される「身寄りのない方への支援のあり方検討部会」を設置した。同部会において、入院・入所時の支援について検討を重ね、令和5年に「身寄りを頼ることができない方に対する支援のレシピ集(緊急搬送編)」を作成した。そして、令和6年10月現在、同部会において「身寄りを頼ることができない方に対する支援のレシピ集(死後事務編)」の作成を進めているほか、厚生労働省のモデル事業として、令和7年1月から包括的な相談・調整窓口の整備の試行実施を予定している。

これらの内、「身寄りを頼ることができない方に対する支援のレシピ集(緊急搬送編)」は、地域情報や支援のコツ、ノウハウなどをとりまとめたもので、日ごろからの準備、救急搬送、到着から診察・検査、入院手続きといった各場面に分けて、支援の内容や法的根拠等が掲載されている。本レシピ集を作成した経緯を伺うと、同部会で互いの支援内容や必要な支援について話し合う中で、市役所や社会福祉協議会、医療機関、福祉サービス事業者等の各支援者の間で、それぞれの役割の違いにより、認識にずれがあることが分かったのだと言う。本レシピ集は、本人が望んだ生き方ができるよう支援していくことを念頭に、各支援者の認識のずれを埋めるために作成したとのことであった。

また、モデル事業の包括的な相談・調整窓口の整備について伺うと、事業の実施に向けて課題の洗い出しを行い、支援の方向性を議論するため、同部会に加え、当事者・家族や医療・福祉の専門職、企業等を対象に、全3回のワークショップを開催するとのことであった。

さらに、豊田市における、身寄りを頼ることができない方の死後の諸課題に対する取り組みについても伺ったところ、医療機関等の支援機関との連携として、支援中に身寄りの有無を確認してもらったり、余命わずかな方の連絡をもらったりしているほか、葬儀会社との連携として、緊急時の遺体安置等の対応について各機関の協力を得ていると言う。なお、親族調査や遺品処理等については、豊田市においても課題となっていると言う。

多職種が連携し、関係者で対話を重ね、身寄りを頼ることができない方への支援、および支援の現場が抱える課題の解決に向け取り組んでいる豊田市の事例は、大変参考になるものであった。

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