11月8日、第2回全国オーガニック給食フォーラムが茨城県常陸大宮市文化センターロゼホールで開催されました。
フォーラムに先立ち、会員自治体の実務者レベルで自治体担当者会議が行われました。
まず、全国オーガニック給食協議会の代表理事を務めるいすみ市の太田市長から、開会のごあいさつがありました。
続いて、開催地の鈴木市長が全国から集まったみなさんにごあいさつと、オーガニック給食に取り組んでいくことを話しました。
基調講演 「給食が拓く子どもたちの未来~行政、協同組合の役割」
鈴木宣弘、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授
鈴木さんは、なぜオーガニック給食なのかということで、
戦後、アメリカの余剰農産物が日本へ、アメリカに都合の良い食生活、学校給食が進められた。このことは、食生活が施策によって変えられるということ。
過去に農林水産省は日本の伝統的な食生活をすれば食料自給率は63パーセントまで上げられると計算してたが、そのレポートが入手できなくなっている。
今、自国防衛のため、食料の輸出を止める。化学肥料原料の輸出を止める。なので、食料を増産して、備蓄して、こどもたちの命を守れるようにする。
いまだに、アメリカに比べて生産コストが高いので輸入でいくという人がいるが、生産コストをみんなで負担して支える。
種子法廃止、自家採種の制限。肥料も種も海外に依存しないで、国内で循環できるようにしていく。
それなのに、田んぼをつぶして一時金、現場をしらない。大局的見地がない。現場が苦しんでいる。
どんどん作ってもらって、需要を作ることに財政支出。学校給食も立派な需要。
農業の問題は、消費の問題。
食料・農業・農村基本法が改定されたが、どう自給率を上げるかがない。
企業が参入しやすいように規制を撤廃しているようにみえる。有事になったら命令する。支援はしないが処罰する。目先の効率だけで東京を始めとした拠点都市に住めばよいと。
スペインでは、ノーファーマーズ、ノーフードと言っている。
ダボス会議では、地球温暖化の原因は農業分野で、田んぼと牛のげっぷだと言っている。
稲作をやって手元に残るのは1万円、時給10円。
日本各地の一次産業は、みんな運命共同体。都市と農村が融合した循環圏。
日本農業をいけにえにするため、農業は過保護だと言われているが、日本農業の補助金は3割、ヨーロッパはほぼ10割。
関税を下げて輸入するのは政策だが、みなさんの選択の結果。
ノンGM表示は、安全な遺伝子組み換えを誤認すると。
グリホサート、日本だけ基準が100倍、日本は草にかける、アメリカは麦、大豆にかける。
ゲノム編集は、審査もするな、表示もするなと。
学校給食で有機米の買い取り、JAも変わってきている。出口は学校給食、生協。
農家もがんばれる。こどもたちは元気になる。こんなにいい循環はない。
財務省がいうやらなければならないことは1.増税、2.歳出抑制、これではおかしくなる。
世田谷区、泉大津市、有機農産物を全国から買う、大きなうねり。
自分たちの食生活を変えていく。身近ないいものをしっかりと支えるべき。
スマート農業、農家いなくなれ。無人にして投資家のためにやるというのがフードテックの論理構成。
できる限り地域循環、給食を核にした自給圏、自分たちも一緒に作る。
給食無償化には4800億円かかるが、給食単価が低すぎ、無償化されるのは基本の部分。オーガニック化には、自治体も同額の負担が必要。
輸入に依存しない。
正義は勝つ、こともある
と締めくくりました。
基調講演 「いのちの給食が世界を変える~私たち大人が手渡せるもの」
堤未果、国際ジャーナリスト
堤さんはアメリカ大統領選挙に関連し、モンサント社訴訟の原告側弁護士のロバート・ケネディ・ジュニアがトランプ陣営にいて、「まずこどもたちの食を変える」としていることに触れました。
アメリカは壊れている。分断され、こどもたちの健康状態が悪い。オーガニック給食の後押しが必要。
アメリカ発の食は巨大企業で、世界中のこどもと学校を狙う。
アメリカの食生活の7割が超加工品。安くて便利で消費されている。
超加工品に使われているのは、遺伝子組み換えのトウモロコシから作られた人工甘味料。
規制がゆるい国、日本。カリフォルニアで日本のポテトチップス等を買うと、「発がん性がある」と食品表示される。
今はSDGs。大量生産、肉食は地球を壊してしまう。とうことで大豆ミートが学校給食に使われたが、原料は遺伝子組み換え大豆で、ブラジルの森林を伐採して作られ、大量の添加物が使われている。
SDGsの中身が重要。
オーガニックは、地元の生産者の安全な農産物を使用する。
ダボス会議は
1.遺伝子組み換え
2.無人農業
3.肉、魚、乳製品は人工
4.昆虫食
を提言し、大手企業が次々参入している。
これに対し、イタリアではパスタ、ピザには入れない。スーパーでは販売を分けると。
情報公開、予防原則。まず種を守ること。
私たちはローカルフード法を通常国会に提出したが時間切れとなった。次の臨時国会にも提出する。
超加工品の特徴は安さ。
大切なのは、質を落とさず地元から買うこと。
世界ローカルイベントで一緒になったブラジルの研究者に言われたのは、日本の有機農業は、都道府県で技術があり、生協の取組があり素晴らしいと。
2月に豊岡市を訪問したが、コウノトリが住めるくらい多様な生物がいるところに人も住まわせてもらっているということだった。アメリカは、いつでも何でもすぐに手に入る、大企業による効率型の食料システム。
オーガニック給食を通して世界が変わります。
日本から未来を変えていきましょう
と話しました。
オーガニック給食を実現したJAからの報告
JA東とくしまの西田聖さんは、田んぼは人工的湿地帯であること、ラムサール条約の水田決議等について話しました。
続いて、JA常陸組合長の秋山豊さんは
農協と行政がタイアップして3年目。
JA常陸は北関東でトップクラスの農協で、販売高92億円、100億円を目標にしている。
県北振興ということで2019年にオーガニックステップアップ事業を行った。
そこに鈴木市長が公約として、学校給食の100パーセントオーガニック化を掲げたため、子会社の(株)JA常陸アグリサポートに有機農業に取り組んででもらった。
受託ほ場は250ヘクタールで、いばらき有機農業技術研究会の松岡先生と契約し、週3日技術指導をしてもらい、じゃがいも、サツマイモ、かぼちゃ、にんじんに取り組んだところ、全部成功。
水稲は、NPO法人民間稲作研究所の技術を習得し成功。
野菜は三美(みよし)地区、水稲は鷹巣地区で行っていて、慣行農家と有機農家で協定を結んだ。
有機農家の(株)カモスフィールドはハウス60棟で取り組んでいるが、100棟に拡大予定。
学校給食に提供し余った米を有機米として販売、ゆうき凛々。
生産はアグリサポートで行い、販売は農協で行っている。
来年は、給食コーディネーターを導入予定と話しました。
有機農業から日本の農業を変えていく ~常陸農業協同組合 秋山 豊 組合長~
https://note.com/ibaraki_kenpoku/n/n0bf51ba69d6b
常陸大宮市の事例発表
常陸大宮市の学校給食オールスターズということで、市学校給食センター大高康男さん、立山方小学校植田琴さん、農家野上勉さん、JA常陸小林美雪さん、カモスフィールド横山慎一さん、市農林振興課疋田徹治さんから事例発表がありました。
大高さんは小中学校15校で2,500食、ほとんどの調理をセンターで行っている。給食の有機野菜の割合は23パーセント。有機で元気、ウェルビーイング。なぜオーガニック給食が必要か、それは
「腸内細菌がよくなる」→「脳がよくなる」→「心も体も人とのつながりも良好」
になるからと話しました。
植田さんは、カモスフィールドで収穫して、その野菜を調理実習していただいていると紹介しました。
横山さんは、自分たちは微生物のお世話係、微生物が作物を育てている。微生物が心地よく育てる環境を整える。変化に気づいてあげるのが難しいと話しました。
野上さんは、水稲15ヘクタール、ネギ50アールに取り組んでいて、ため池からパイプラインを通って田んぼにくる水に農薬が混ざらないように、浄化区間として設置したビオトープを紹介しました。
小林さんは、JA常陸は8市町村にまたがり、有機農家が多いがまとまっていない。野菜が足りない時に、安定供給できるパイプ役と話しました。
疋田さんは、学校給食、地域を支える、地産地消。栽培管理の協定締結は苦労していない。地権者75名、中間管理機構を通して再配分。こどもたちのためにと言えばだれも反対しないと話しました。
パネルディスカッション
「子どもたちを守り、地方を輝かせる環境時代の給食とは」
~各地で活躍する女性たちにきく~
続いてパネルディスカッションが行われました。
ファシリテーターはノンフィクション作家の島村奈津さん、パネリストは農林水産省の勝野美江さん、オーガニック給食マップの野々山理恵子さん、横田農場の横田祥さん、白山環境給食まちづくり協議会の米山立子さんです。
勝野さんは、徳島県副知事を務めていた時に徳島県版みどりの食料システム戦略基本計画を策定し、徳島県はエシカル農業とエシカル消費の二つのポイントで進めていったと話しました。
野々山さんは、オーガニック給食マップは2021年に立ち上がったWebサイトで、以前はパルシステムの代表を務めていて、生協の目標は共生の社会をつくることと話しました。
米山さんは、石川県白山市から来ました。今年2月に発足したまちづくり協議会で、自分たちで今できることを今できる範囲でやっていこうとしていると話しました。
横田さんは、減農薬と有機農業、170ヘクタールで畑をつくっている。また、おこめLABOで農業体験、料理教室を行っている。そして、食育絵本、「農業は楽しい」を伝えるアグリバトンプロジェクトは3人で始めたが、現在169人になっていると話しました。
勝野さんは、常陸大宮市の事例発表にふれ、関係者が仲良し。うまくいっていない時は文句を言う。仲良しが成功の秘訣と話しました。
野々山さんは、つながりを大事にする。田んぼに入る水をよくする→合成洗剤をやめる→旅館でせっけんシャンプーを使うようになったと事例を紹介し、社会のルールづくりに関与するには数の力、仲間づくりが必要と話しました。
米山さんは、2年生と5年生のこどもがいるが、給食は食べていないと自分ごとにならない。行政、一般消費者への見せ方を考える、分断しないようにと話しました。
横田さんは、中学1年生から25歳まで6人のお子さんがいて、給食をずっと見てきて残飯が多いと話しました。
そして、島村さんの次の世代のためにという投げかけに
勝野さんは、できる人をできるところにあてると話し、
野々山さんは、3.5パーセントの法則。コミュニティーの3.5パーセント以上の人が参加していれば、失敗していない。カリスマは必要ない。社会を変えられることもあると話しました。
米山さんは、オーガニックは地産地消が大前提と話し、
横田さんは、担い手不足を何とかしたい。アグリバトンプロジェクトは農家以外も参加している。担い手育成に協力をと話しました。
AGRI BATON PROJECT
https://nijinoehonya.studio.site/agt#agt_top
JA組合長から一言
続いて、JA常陸組合長の秋山さんを始めとして、多くの組合長がステージに上がり、有機農業や環境に配慮した農業について抱負を述べました。
閉会
最後に、次回(第3回)フォーラムが2年後に小山市で開催予定であることを発表し、浅野市長が閉会の言葉を述べました。
浅野さんは、次回のフォーラムにバトンをつなぐ、小山市で開催させていただく。
山田さんから直接依頼があったエピソードを披露し、
今年は(有機米の作付けが)20haを超えるようになりました。小山市の場合、オーガニック給食ですべて有機米で対応しようとすると約60ヘクタールを耕作しないといけない。来年度は30ヘクタールの目途がたってきましたので、みなさんをお迎えするころには60haが達成できそうだと、また、有機野菜もだいぶ取り入れることができたと報告できる状況にして、みなさまを全国からお迎えできればと思います。
これからのこどもたちに未来を担ってもらうためには、食をしっかりとこどもたちに提供できるようにするというのは、すべての大人の責任。自治体、民間の垣根を問わず、一丸となってオーガニック給食、そして有機農業の普及を進めていく必要があると思っております。
皆様と一緒に取り組むために、新たな出会いが誕生するような形でできるだけ多くの皆様に参加できるようなフォーラムを目指してまいりますので、どうぞ2年後よろしくお願いいたします、ありがとうございましたと話しました。
閉会後は、会場を移し、交流会、意見交換会が行われました。
関係者のみなさま、フォーラムの開催、ありがとうございました。
オーガニック給食マップ
【お知らせ】第2回全国オーガニック給食フォーラム実施報告(1)
https://organic-lunch-map.studio.site/info-detail/RXid2BlE
【お知らせ】第2回全国オーガニック給食フォーラム実施報告(2)
https://organic-lunch-map.studio.site/info-detail/WlI7I7WU
常陸大宮市
第2回全国オーガニック給食フォーラム in 常陸大宮を開催しました(フォーラム編)
https://www.city.hitachiomiya.lg.jp/kurashi_gyousei/business/yukinougyou/page010382.html
第2回全国オーガニック給食フォーラム in 常陸大宮を開催しました(交流会・意見交換会・ほ場見学・有機農産物試食会編)
https://www.city.hitachiomiya.lg.jp/kurashi_gyousei/business/yukinougyou/page010419.html
【アーカイブ配信開始】 第2回全国オーガニック給食フォーラムin常陸大宮
https://www.city.hitachiomiya.lg.jp/kurashi_gyousei/business/yukinougyou/page010386.html